先月、竣工写真をアップさせていただいた「レッドゾーンに建てた地下車庫のある家@大磯町」。
レッドゾーン内での建築は、初めての取り組みでしたので、一度振り返っておこうと思います。
2001年に施行された土砂災害防止法に則って、各地域で土砂災害区域と土砂災害特別警戒区域が指定されました。
とはいえ、調査を行ってから指定していくので、すぐに決められるはずもなく、例えば横浜市でいうと、5年前の令和3年度までに指定を終えたということです。
地形が変わったり、新たに確認されるがけ地などもありうるので、引き続き見直し作業も行われています。
対象区域に指定される条件がこちら。

タウンニュースHPより抜粋
詳細は省きますが、要は大雨などにより土砂崩れの被害に遭う危険性が高い地域です。
土砂災害警戒区域(イエローゾーン)に建築制限はありませんが、特別に警戒すべきレッドゾーンは厳しい制限があります。
国土交通省の「土砂災害特別警戒区域における建築物の構造方法」(リンク)によると、2つの方法が挙げられています。
1.建築物の構造自体を、想定される土石流の高さや衝撃力に応じて定められた仕様を満たす鉄筋コンクリート造等で造ること。

2.急傾斜地と建築物の間に鉄筋コンクリート造の塀等を設置すること。

今回の事例のがけは、この通り。

この崖が崩れた場合に建物を守る塀をつくるというのは、現実的ではありません。
がけと建物の間にそれ相当の距離が必要ですし、そのためだけの塀なのに、多大なコストも手間もかかります。
ということで、1.の建物の構造自体を土砂災害から守るコンクリート造で建てる方式を選択しました。
これは、この法律に則った制限ですが、例えば鎌倉市など、その地域特有の規制がある場合には、さらにハードルが上がります。
ご自宅がレッドゾーンにあてはまるかどうかは「神奈川県土砂災害ポータル」で検索していただき、
検索区域の選択から所在地を入力すると、その地域の警戒区域が識別されます。
さらに右上の背景図から、地理院地図(航空写真)を選ぶと、

このように3Dで確認できますので、ご自宅が心配な方は是非チェックしてみてください。
さて、今回の事例に戻りましょう。

解体後の写真ですが、以前もRC住宅が建っていました。
当然のことながら、土砂災害防止法の施行前。
幸か不幸か、建て替え前にレッドゾーンに指定されてしまい、コンクリート住宅や地下を活用する工事を得意とする当社にご相談いただきました。

レッドゾーンの規制は先に見た通り
「想定される土石流の高さや衝撃力に応じて定められた仕様を満たす鉄筋コンクリート造の外壁等を設けること」。
この「仕様を満たす」のに手間と時間がかかりましたが、ようやく建築確認申請が通り着工しました。

今回の地盤はものすごく固い地盤で、なおかつ玉石も混ざり、根伐りも大変でした。

一方で、通常であればH鋼を打ち込み矢板で渡す山留工事を行う必要がありますが、固い地盤ゆえ、山留工事を行わずに進めることができました。
この基礎の配筋が建物と一体化して根っことなり、土砂災害から建物を守るわけですが、通常の基礎の配筋と比べるとこの通り。

基礎梁の厚さや密度が通常の地下室地下車庫のある家とは異なるのがお分かりいただけると思います。
これが、「想定される土石流の高さや衝撃力に応じて定められた仕様」をクリアした基礎の配筋です。

コンクリートの打設を終えた状態です。
左側ががけに面する壁ですが、通常のコンクリート造の約1.5倍の厚さがあります。

これが地下のコンクリートの打設を終えたところ。
建物を支える6本の太い柱の配筋が、上空に伸びているのが印象的です。

このあと、2階までのコンクリート打設工事を終え、

完成しました。

問題のがけ地とは、これだけの距離をとっています。
最初にお話ししたレッドゾーンに建築するための条件その2の「がけと建物の間にコンクリートの塀をつくる」というのが現実的ではないというのがおわかりいただけると思います。
その代わり、建物自体がその「塀」の代わりをするので、

万が一、災害が発生したときに、窓から土砂が流れ込み、住む人に危害が及ぶことが無いように、1階には窓を設けず、計算上これ以上の高さに土砂が達することはないと判断される2階のみに窓を設けています。
今回の建築では、手間も時間もコストもかかり、オーナー様は大変な思いをされたことと思いますが、労力をかけた甲斐のあるお住まいに仕上がったと思います。
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